バドミントンにおいて、ラケットはプレーヤーの「手」と同じ役割を果たすといっていい。そのラケットのなかでも「グリップ」は、選手によってテープの素材や巻き方が異なり、独自性が出やすい部分だ。ここでは、トップ選手のグリップへの「こだわり」に迫る。
【連載】Vol.12
奥原希望(日本ユニシス)
おくはら・のぞみ◎1995年3月13日生まれ、長野県出身。仁科台中―大宮東高を経て、2013年に日本ユニシス入社。高校2年の全日本総合では史上最年少での女子シングルス優勝を飾ったほか、3年時には世界ジュニア女子シングルスで日本人初Vを達成。その後、2度にわたるヒザのケガも乗り越え世界の舞台で活躍。16年リオ五輪で銅メダルを獲得し、17年世界選手権では日本シングルス勢初となる金メダルに輝いた。
――グリップのこだわりはありますか。
とくにないんです。でも、グリップテープの巻き方は一応、決まっています。まず(もともと巻かれていたグリップをはがして)ベースにアンダーラップを大体2周巻きます。そのあと、さらにアンダーラップを10センチくらいの長さで切って、長細くなるように四つ折りにしてから、グリップエンドの部分に巻きます。だいたい3周ぶんくらいですね。
――十分、こだわりがあると思いますが…(笑)
そうですか?(笑) そのあとグリップテープを巻いていきます。グリップエンドの部分で3周目くらいから斜め下にずらしていって、あとはきれいに、デコボコにならないように、テープ幅の半分くらいをかぶせながら巻いていきます。そうしたらだいたいこの位置で終わります。

――キャップの部分ですね。
はい。この位置で終わらなかったらやり直します。
――やり直すとは?
最初から巻き直すんです。グリップエンドの巻き方がうまくいっていなかったり、引っ張り過ぎてしまうこともあるので。テープを強く引っ張りながら巻くと、握ったときに硬く感じられたり、カサカサしてしまうので、できるだけ自然に巻くようにしています。

――色は白が好みですか。
白ですね。このラケットじゃないときも白です。色によって握った感覚が違うので…。黄色か薄いピンクのときもありましたけど、もちっとした感じは白がすごくしっくりきます。
――使っているのはウエットタイプですね。
絶対にウエットです。デコボコしたのは滑るので…。タオルグリップも使いませんね。
――巻き替える頻度は?
汚くなったときか、大会前ですね。ずっと使っていて少し滑るなと思ったときも替えます。持ったときに、新しいほうが吸いつくので。でも、新品で(巻いたばかりで)試合に行くのは嫌なんです(笑)。ちょっと使ってなじませたほうがいいですね。
――細かいところまでこだわっていると思います。
あと、アンダーラップを新品のときの状態で巻くのか、だいぶ減ってから巻くのかでも、テープの感じが全然違います。減った状態のものはパスパスになってしまうので。自分としては中盤くらいのものがいいですね。前半は少しフワフワしている感じがあります。
――アンダーラップで、そこまで考えている人は初めてです。
でも、みんなも感じているんじゃないかな。「確かに」っていってくれると思います(笑)。


――ラケットは手の一部という表現もされますが、そういう感覚はありますか。
ないです(笑)。ないですけど、違和感があったら嫌じゃないですか。気になったら、何か違うなと思いながらやっていたら、感覚もズレてしまうので。そう考えたら、体の一部なのかな。体でも違和感があったら気になりますし…。結局、(ラケットも)体の一部なのかもしれませんね(笑)。
取材・構成/バドミントン・マガジン(取材日/8月7日)