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【連載③】「DUORA」はこうして作られた~革新ラケットの開発秘話~ 【第3回】商品化から発売、そして“拡散”へ

2015年9月、ヨネックス株式会社が発売した「DUORA10」。後に「7」「6」「Z-STRIKE」と続くDUORA(デュオラ)シリーズは、バドミントン界のエポックメーキングとして、語り継がれていくであろうラケットだ。

最も大きな特徴は、表裏が異形状であること。ラケットの表面と裏面を使い分ける発想がなかったバドミントンにおいて、フォアハンドで使う面、バックハンドで使う面を区別することを提案した。

いまや、世界のトップ選手から一般のユーザーまで、幅広い層に受け入れられている画期的なラケットDUORAシリーズ。初代「DUORA10」商品化への道のりと、ユーザーに受け入れられるまでを追う。

 

第1回 技術開発部の挑戦は>> こちら

第2回 マーケティングの戦略は>> こちら

最終回 シリーズ完成! そして、その先へ――>> こちら

 

★「お客様目線」に立つことで生まれたデザイン

フォアハンドとバックハンド、それぞれのパフォーマンスを引き出したい――。

フォアとバックとで面を使い分ける表裏異形状ラケット「DUORA」の開発は、2011年頃にスタート。ヨネックス新潟生産本部の工場内では、技術開発部がさまざまな角度から新たなモデルへのアプローチを試みた。新シリーズの立ち上げから製品化まで、DUORAは4年の月日を費やした。その間、約30種類もの試作品が生み出された。

動作解析やラケットの構造設計など、それぞれに高いスキルを持つメンバー。その誰もが意識したのは「お客様目線」だったと、技術開発部の大谷和也はいう。

「表と裏の形が違うことが、お客様に本当に受け入れられるのか。具体的にいえば、表面と裏面をどうわかってもらうのか――。そこが一番の問題でした。グリップの握った部分で認識するという案もありましたが、実際は、グリップテープを巻いて使われることがほとんどなので…」

そこで浮かんだのが、目で見てわかること。第2回で紹介したように、ラケットを握ったとき、右利きのプレーヤーはオレンジ色が自分で見えるように、左利きのプレーヤーは緑色が自分で見えるように、色の切り返しなどに配慮したデザインが施された。

そして、製造工程でも見直しが図られた。各工程で表裏異形状のモデルを作る際に問題となる箇所が洗い出され、それらを改善。さまざまな部門で、労力が費やされた。

試行錯誤を繰り返し、商品化へのゴーサインが出たのは2014年。そして、2015年9月に「DUORA10」が、その後16年3月に「7」、同年9月に「6」、17年2月に「Z-STRIKE」が発売された。

 

★「使えば納得してくれる」という確信

東京本社で業務を行なう、グローバル戦略室。若手の和田治久とその上司である金子幸也は、試作モデルの段階から、この表裏異形状ラケットの性能に惚れ込んでいた。

強豪・埼玉栄高出身で、2010年のインターハイ・男子シングルス王者でもある和田は、「多くの人に、このラケットのよさを実感してほしい」と強く思っていた。しかし、現場に持っていくと、表と裏の形状が違うことで「使いにくいんじゃないの?」と拒否反応を示される。

「なかなか手に取ってもらえなくて、最初は苦労しました。でも、使えば納得してくれるという確信がありました」

そこで2016年から、試打の機会を増やすため、全社をあげて「DUORA トライキャンペーン」を実施。ウェブサイトで希望者を募り、実際に“表裏異形状”を体感してもらったのだ。

「ウェブでの公開後、すぐにお客様からのお申し込みが殺到したんです。皆さんに『使ってみたい』と思っていただいていることがわかり、それだけでも勇気づけられました」と金子が振り返る。

そして実際にも「使ってみたら、よかった」「印象がよくなった」「購入するきっかけになった」という声が、数多く寄せられた。和田の確信は現実となり、「DUORA」は確実に、多くの人に受け入れられていった。

約30種類にも及んだという「DUORA10」の試作モデル。フレームの表面と裏面の形状を微妙に変えながら試作を重ねた
機械と人の手によって、さまざまな工程からなるラケット製造。表裏異形状のモデルを製品化するにあたり、製造ラインの見直しも図られた(①/シャフトとフレームの成型、②/ロボットによる塗装、③/マーク貼り、④/マーク貼りを終えた「DUORA Z-STRIKE」 )

 

<文中敬称略/第4回へ続く 取材協力/ヨネックス株式会社>

 

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