東京2025デフリンピックの最終日(大会11日目)、調布市の京王アリーナ(武蔵野の森総合スポーツプラザ)で行なわれたバドミントン競技は男女混合の団体戦のメダルマッチが実施され、前回大会で銀メダルの日本はこの種目で史上初の金メダルを獲得した。
団体戦2日目、2022年の前回大会で銀メダルだった日本は、午前に行なわれた準決勝では、マレーシアを3-1で下して勝ち上がってきた台湾と対戦。男子ダブルスの森本悠生/太田歩、女子ダブルスの矢ケ部紋可/矢ケ部真衣がストレート勝ちすると、男子シングルスでは森本がふたたびコートに。第1ゲームを13点に抑え、第2ゲームはレシーブ力のある相手にねばられながらも攻めに徹して勝利。日本は銀メダル以上を確保した。
一方、前回チャンピオンのインドと中国が戦う反対側の山では熱戦が続いていた。日本が10時30分から始まった準決勝を合計約1時間40分で終わらせたのに対し、こちらは約2時間半に及ぶ戦いになり、最後は中国が勝ち上がった。
14時30分からの決勝戦は、男子ダブルスからスタート。決勝の第1試合を託された沼倉昌明/太田は、「全力を尽くして、できることはすべてやりきった」(沼倉)と振り返る熱戦を展開。21-23、21-16、18-21とファイナルゲームの末に敗れたが、このファイトが次につながる。
「悪い流れではなかった」(矢ケ部紋可)とコートに入った女子ダブルスでは、矢ケ部紋可/矢ケ部真衣が、第1ゲームを先制。第2ゲームを奪われたものの、ファイナルゲームはミスの少ないプレーで中国ペアを引き離し、勝負をタイに戻した。
そして、日本に大きな勢いをもたらしたのが、男子シングルスの森本だ。準決勝で中国の決勝進出の立役者になった対戦相手に13本、16本で勝利。続く第4試合に入った女子シングルスの矢ケ部真衣もさらに会場を盛り上げる。攻撃力に自信のある真衣は、ロングサービスからリズムをつくると10連続得点などで相手を圧倒した。矢ケ部真衣がチャンピオンシップポイントをものにすると、観客席にいた仲間が駆け寄り、一つの輪になって日本の初優勝を分かち合った。
チーム最年長の沼倉は、「団体戦で一番いい色を獲得できた。金が決まった瞬間、これまでの苦しみ、大変だったことが報われたと感じました」と歓喜に浸っていた。
【選手コメント】
沼倉昌明
「個人戦はあと一歩メダルに及ばず悔しかったのですが、団体戦の金メダルうれしいです」
永石泰寛
「デフリンピックの出場は2回目。前回の団体戦、今回の個人戦で銀メダルだった悔しさが残っていたので、団体戦では世界一になれてうれしい」
太田歩
「100年という記念すべき大会で金メダルをとれたことをうれしく思います。最高の仲間と一緒にたくさんの応援の力をいただき、みんなで勝ち取った金メダルです」
森本悠生
「個人戦が銀メダルだったので、団体戦では金メダルを獲得したかったです。ハードな日程でしたが、戦い抜けてよかったです」
沼倉千紘
「今回が4回目のデフリンピック。金メダルを初めて獲得してうれしいです」
矢ケ部紋可
「私たち一人ひとりが頑張って獲った金メダル。とてもうれしいです」
片山結愛
「個人戦では1勝もできず悔しかったのですが、団体戦では金メダルといういい報告ができるように全力で頑張りました」
矢ケ部真衣
「個人戦の女子ダブルスで金メダルを獲得したあとも、気を緩めることなく団体戦のダブルスとシングルスに挑みました。チームに貢献したいという気持ちがありました」
取材・文/鈴木快美
写真/菅原 淳