7月24日、大阪府門真市の東和薬品RACTABドームで、高校からバドミントンを始めた高校2年生のための全国大会『Gifu Bluvic DREAM CUP 2025 東西高校生選抜バドミントン大会』が開催された。
出場選手は、中学まではバドミントン部以外に所属していた、高校始めの選手たち。バドミントンをやりたいと思っていたけれど、中学にバドミントン部がなかったという高校生や、中学の授業でバドミントンを経験し、そのおもしろさに魅了されて、高校から始めたという選手もいた。男子シングルス、女子シングルスの2種目で、それぞれ各県や首都圏の初心者対象の大会の成績優秀者が集結。男女各27選手、計54選手が熱戦を繰り広げた。
男子シングルスで決勝に進んだのは、静岡県・科学技術高校の黒川颯真と大阪府・千里高校の佃礼二郎。攻撃の黒川とネット前から組み立てる佃の対戦は、ファイナルゲームにもつれる大激戦に。第1ゲームを佃がものにし、第2ゲームは黒川。第1ゲーム中盤から脚をつりかけていたという佃に対し、黒川はファイナルゲーム序盤から積極的に攻めて17-8と最大9点差までリードを奪った。しかし、佃はそこから強い精神力でシャトルを追い、18-20と2点差まで挽回。黒川にとっても難しい展開となったが、最後は黒川が得意のスマッシュを決め切り、勝利をものにした。


「相手選手が疲れていたのがわかっていたので動かすように意識しましたが、決めたいという焦りもあって難しかった。勝ててうれしいです」と振り返った黒川に対し、敗れた佃は「最後、もぎとりたかった。ここで優勝することを目標にしていたので、悔しい」と話したが、「これからもバドミントンを続けていくので、筋力強化など今大会で見つかった課題に取り組んでいきたい」と先を見据えた。
女子シングルスは、静岡県・掛川西高校の河窪莉々と佐賀県・神埼清明高校の髙尾有希が決勝に進出。第1ゲーム中盤まで接戦を繰り広げたが、17オールから河窪が4連続得点でゲームをものにし、決勝を制した。「特に武器はない」と話す河窪だが、オールラウンドなプレーでコート奥もネット前もカバー。準決勝の接戦をものにした髙尾に対しては、コート奥に追い込んでからネット前に落とす配球が効果的で、得点を重ねた。


「初めての全国大会だし、すごく緊張した」と話した河窪は、試合後は「素直にうれしいし、チームのみんなにいい報告ができる」とはにかんだ笑顔を見せた。一方、「私の苦手なところを突かれた」と目を潤ませた髙尾は、「みんな同じスタートだから優勝したかった」と悔しさを滲ませたが、「まずは自分の苦手なところを克服して、もう一回挑んでいきたい」と新たな決意を口にした。


男子優勝 黒川颯真(静岡・科学技術高)
「1回戦の出だしが悪くてファイナルゲームを戦いましたが、徐々に調子が上がったのがよかったです。科学技術高校に入って、バドミントン部が一番楽しそうでバドミントン部に入部しました。得意なプレーはスマッシュですが、だんだんレベルが上がっていくとスマッシュを打っただけでは決まらないのが難しいところ。今日もなかなか決まらないところもありましたが、部活での練習で体力をつけてきたのが生きたのかなと思います。今回、課題がたくさん見つかったので、それをしっかり練習して、次は県大会に出場できるように頑張りたいです」
女子優勝 河窪莉々(静岡・掛川西高)
「全国大会が初めてだったので緊張していたのですが、自分らしいプレーができたかなと思います。私自身ははっきりとした武器というものはないのですが、相手が嫌だと思うところを突いていくのが得意。今日はミスをしないように、それを出せるように気持ちを入れて臨みました。バドミントンはもともとやりたかったのですが、中学にバドミントン部がなくて、高校ではバドミントンをやろうと決めていました。部活は全員がほぼ初心者みたいな感じですが、みんなで一緒に頑張ってきました。目標は、初心者だけど、地区大会で経験者の多い学校に勝つこと。シングルス、ダブルス、団体戦で県大会に行けたらいいなと思います」
この大会は、高校からバドミントンを始めた選手が大きな夢をもてる機会をつくりたいという思いをもった東京や大阪を中心とした教育関係者が協力して立ち上げ、今年で3回目の開催となった。近年、ジュニア期からバドミントンを始める選手が増加し、高校からバドミントンを始めた選手が公式戦で上位に進出するハードルが上がる中、同じスタートラインの選手同士で対戦することを通して、バドミントンの楽しさや競技を通じて全国の仲間と交流する魅力に気づき、卒業しても長く競技に親しんでほしいという関係者の思いが形になった大会だ。今年は、国内トップリーグのS/Jリーグに属する岐阜Bluvicが大会趣旨に賛同し、「岐阜Bluvic DREAM CUP 2025」という大会名で開催された。
独自に高校始めの大会が行なわれている各県の代表が出場する形になっているため、現状では出場県は限られているが、大会実行委員会の小島治哉委員長によれば、今後、予選大会が行なわれる県なども増える見込みだといい、大会はさらに規模を拡大していきそうだ。
取材・文/バドミントン・マガジン編集部
写真/太田裕史