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【日本ランキングサーキット】姉妹対決は姉の逆転勝利で決着!「引退する前に勝って終わりたい」<大会サイドストーリー>

国内のランキング上位選手が集う2023日本ランキングサーキット(5月27日-31日/埼玉・サイデン化学アリーナ)。ここでは、2回戦が行なわれた大会2日目から、記者が取材したサイドストーリーをお届けする。

姉妹の対決は日本B代表の姉が大逆転勝利!

女子シングルスの2回戦では、日本B代表の栗原あかり(筑波大/上写真右)が2-1で妹の栗原琉夏(NTT東日本)を下してベスト8に駒を進めた。1学年違いの姉妹対決。試合直前まで普通に話をする仲のよい2人だが、コートでネット越しに立てば真剣勝負。互いの意地をぶつけ合った。

小学生の頃から切磋琢磨してきた間柄。中学、高校では、千葉県大会の決勝などで対戦することはあったが、パワーで勝る姉のあかりが圧倒していたという。公式戦での姉妹対決には全勝中。しかし、第1ゲームは、妹の琉夏(上写真)が先取。上からのキレのあるショットで、姉を走らせた。姉のあかりは「高校を卒業してからは対戦していなくて、4年ぶりくらい。強いなと思いました。以前とは違って、きれいに淡々とラリーをしてくるので、それを上回るラリーをしなければと思いました」と主導権を握られた展開に驚いていた。

第2ゲームは、反撃に出た姉が前半を7点差でリード。それでも姉からの公式戦初勝利をねらう妹の琉夏が、頭上を越しにくる速い球を素早い反応でたたき落としてポイントを奪う。試合の流れをつかむと、19-15と逆転して終盤を迎えた。あと2点で妹のストレート勝ちだったが、そこからが遠かった。前後の揺さぶりを積極的に仕掛けてくる姉のラリーについていけずにミスが続き、まさかの6連続失点で19-21。妹の琉夏は「こっちが我慢していれば相手がミスをしてくれると思って、自分から攻撃にいくのをやめて守りに入ってしまったのがよくなかった」と悔しがった。

1ゲームずつ分けあって迎えたファイナルゲームは、姉の機動力が上回った。フットワークのスピードを上げて、先手を奪取。焦って逆襲をねらう妹の琉夏は、強引な仕掛けからミスが増え、試合中に「何回、同じことをやるの……」と独り言が漏れるほどに失点を重ねた。守りに入って第2ゲームを奪われた展開から、先手を取りにいく気持ちが強くなり過ぎた。決着がつくと、姉のあかりがガッツポーズ(上写真)。妹の琉夏は「私が想像していたよりも相手が動けていて、スピードが速かった。追いつこうと思っても実力が足りませんでした」と終盤の力負けを認めた。

互いが以前のイメージを上回る力を見せた一戦だったが、姉が姉妹対決の全勝を継続させた。妹の琉夏にとっては、めざす先に、いつも姉がいる状況だ。高卒で実業団に入って3年目となる妹の琉夏がめざすのは、日本代表入り。この大会は、ベスト8に入ると国内最高峰である全日本総合選手権(12月)の出場権を得られるため、ここで勝てば一歩前進だった。姉のあかりは、昨年の全日本総合で8強入りしたことで今季の日本B代表に選出されている。妹の琉夏は「すごく悔しい。でも、前よりは通用しているかなと思います。引退する前には倒して、勝って終わりたいです」と苦笑いを浮かべたが、日本トップレベルの大会で競争できる姉妹は、そうはいない。

この大会での対戦が貴重な機会であることは、2人とも意識している。姉のあかりが「こういう舞台で対戦できたのは、思い出になる。勝っても負けてもよい試合をしたいと思っていました」と話せば、妹の琉夏も「学生の時の大会とは違う。社会人もみんな出てくる大会では、なかなか対戦できないので、当たったこと自体はよい経験」と振り返った。互いに刺激を受けた一戦も、さらなる高みをめざす糧だ。今後さらにステージのレベルを上げて対決が繰り返される可能性があれば、2人で日本代表入りの可能性もある。今後も活躍が楽しみな姉妹だ。

取材・文&写真/平野貴也

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