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【国内ニュース】理事3名が厳重注意処分、8名が注意処分に 日本協会が元職員による横領事件および補助金の不正申請に関わる第三者委員会の調査報告書の概要を公表

日本バドミントン協会は、10月21日、2018年度に元職員の横領や補助金の不正申請があった問題で、第三者委員会がまとめた報告書の内容、横領事件の隠蔽に関わった関係者の処分および今後の再発防止策について記者会見した。

記者会見に出席した日本バドミントン協会の関根義雄会長(左)と協会の顧問弁護士である葉玉匡美氏

記者会見では、第三者委員会による報告書のうち、協会によって「調査結果のうち確実な事項」と認められた内容が記載された概要が配布された。報告書では、元職員が2017年ころから繰り返してきた計980万円に上る横領や、元職員が弁済できなかった分の損失を7名の理事らが補填し、秘密裏に処理したこと。また2019年の日韓高校交流事業でJOCからの補助金を不正申請した件に関する事実関係が明かされており、第三者委員会はこの調査を通じて、日本協会の問題点を、ガバナンスの欠如・組織の機能不全、役職員および関係者の意識の低さ、根深い隠蔽体質の存在、事務局体制の脆弱性と結論付けている。

なお、日本協会では9月22日の臨時理事会で、関係者の処分を決定しており、横領事件や補助金の不正申請などの対応に関わった3名の理事に厳重注意処分、関根義雄会長はじめ8名に注意処分が下されている。記者会見に出席した関根会長によれば、処分内容に関しては、この事案において管理的立場にあった理事に対して厳重注意処分、横領を処理するための補填に関わった理事に対しては注意処分としたという。

厳重注意処分とされたのは、銭谷欽治専務理事、丹藤勇一理事(事務局長)、木戸純一監事。注意処分とされたのは、関根会長、山田順一郎副会長、佐竹養一理事、歸山好和理事、河崎正紀理事、山蔭栄理事、京田和男監事(当時理事)、笹林義春事務局長代理(当時理事)。

また、日本協会は再発防止策として、不正会計を防ぐ業務フローの改善、ガバナンス強化、意識改革・コンプライアンスの周知徹底、理事会運営の改善、事務局体制整備および人員確保、関連団体との連携強化に努めていくとしている。

会見には関根義雄会長と日本協会顧問弁護士の葉玉匡美氏が出席。関根会長は冒頭で、第三者委員会の調査結果が関係者の名誉を棄損する内容を含むことから、公表の時期や方法を検討してきたこと、JOCなどから事実関係や処分および再発防止策について公表するように要請があったことにふれ、「元職員が会員の皆様から受領した大切な財産を横領したこと、元職員が補助金について過誤の申請を行なったことおよび当該職員が過誤の発覚を避けるため虚偽の領収証内訳書をJOCに提出したこと、ならびに当該横領事案や補助金の過誤が発覚した際の役員の対応について管理監督上の問題があったことについて、大変申し訳なく思っており、皆さまに心よりお詫び申し上げます」と謝罪した。

以下は、関根会長および顧問弁護士と記者との主な質疑応答。

――処分内容に関して、根拠は

関根会長「管理責任のある者に対して厳重注意処分を、お金を補填するために協力した者に注意処分を与えました。理事に対する懲戒処分の規定はありません。過去の厳重注意処分の事例に鑑み、それよりは重くないだろうということでそのような処分を決定しました」

――第三者委員会で「横領を意図的に隠避したと言わざるを得ない」と認定されているのにもかかわらず、軽い処分なのではないか。そもそも、処分を受ける立場の理事が、理事会に出席して、自分たちの処分を決めている

関根会長「全理事が発言し、みんなで検討し、決めたわけです。私の一存で決められるものではありません」

葉玉弁護士「処分を受ける理事が理事会に参加しているとの指摘ですが、法律的には、自分の処分に対して議決権行使はできませんが、自分以外の他の理事に対しては議決権行使をしなくてはなりません。今回のような事案に関しては、理事会で議論がされて、処分が決定したと理解しています。処分の内容に関しては、具体的なものがあるわけではなく、話し合いの中で決めていくしかなく、過去の事例の中で、一番重い処分が厳重注意であり、すでに減給という処分がなされており、追加の処分ということになります」

――引責辞任の意向は

関根会長「そういった責任の取り方というのもあると思います。ただ、今は再発防止策を講じて信頼を取り戻すことに努めたいと思っています」

――第三者委員会の調査で「隠蔽体質がある」とされたことについて、どう感じているか

関根会長「公益財団法人としては、もっとしっかりと公表しないといけないという気持ちはあります。ただ、横領事件のときは、みんながそういう気持ちがありながら、本人のことを思ってお金を拠出してしまった。協会としては隠蔽体質があったと今となっては感じ、申し訳なく思っています」

――第三者委員会の報告書や処分の公表がこれほど遅くなったことに関しては

葉玉弁護士「第三者委員会の調査報告が提出されたあと、公表することは計画していました。ただ、その内容が第1回の調査報告の内容と食い違いがあったことや、調査報告自体が第三者に対する開示を禁止しており、ある意味、限定された任意調査の結果なので、それを根拠に責任追及に用いてはならないという留保がついていました。内部の人間だけではなく、すでにやめられた人間などさまざまな名誉棄損の可能性もあり、どのような表現・形で、いつ公表すべきかということをJOCやスポーツ庁と協議してきました。その意味で非常に時間がかかったことには大変申し訳ないと協会として思っていると聞いております」

――3月の会見では銭谷専務理事が出席したが、今回出席していない事情は

葉玉弁護士「今回の記者会見に関しては、協会だけでなく、JOCなどとも協議してきました。その中で、専務理事については厳重注意処分という一番重い処分を受けた者であり、また第三者委員会の報告と言い分の食い違いがあることから、そのような立場の方を協会の主催する記者会見の中で出席させるのは、協会との意見の相違も出てくるのではということもあり、まずは協会でどのような意見を持っているのか、その処分の内容について会見を開催することになりました。これはJOCさんにも理解をいただいています」

――スポーツ庁、JOCなどでつくる『スポーツ政策の推進に関する円卓会議』で、バドミントン協会への強化費の2割削減が決まった

関根会長「選手にもつらい思い、不安な気持ちにさせて非常に申し訳なく思っています。来週中にチームの代表者会議を開催し、専務理事が部長・監督に話をしたいと考えています。協会の予算は強化費だけではありません。大会の運営や事業に対しても予算があります。その中で、来年はパリ五輪のレースがあるので、強化の予算は削らずに、強化には負担はかけずに他のところで調整し、パリ五輪で頑張ってもらうつもりです」

――強化費削減にも、関係理事や役員への解任の声は上がらなかったのか

関根会長「バドミントン協会の改選期は6月です。辞任しろという声もないので、それまでは、改善するためにしっかり仕事をしていきます」

葉玉弁護士「理事の解任というのは、評議委員会の権限になります。今後、評議委員会が開催されたときに、そこで判断されると思います」

――年度内に行なわれる協会のガバナンスコードの適合審査によっては、不適合となれば強化費の申請ができなくなるが

関根会長「10月中に出す書類を事務職員が一生懸命作成しています。私は、審査は通るんではないかという考えはもっています」

――強化費が申請できない場合は

関根会長「その場合は、3月に予算案を出すときにわかっているわけですから、その対応をしたいと思います」

取材・文/バドミントン・マガジン編集部

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