【特別インタビュー】「バドミントンをメジャーに、もっと活性化していきたい」ヨネックス新社長 アリサ ヨネヤマ氏に聞く<Part.2>

今年4月にヨネックスの社長に就任したアリサ ヨネヤマ氏。ヨネックス史上初の女性社長であり、まだ35歳という若いリーダーだ。国際的なビッグイベントが続き、盛り上がるバドミントン界でヨネックスはどのような役割を果たし、今後を見据えていくのか。新社長にヨネックスとしての今後の展望などを聞いたインタビュー(バドミントン・マガジン10月号掲載)を特別編としてバド×スピ!で公開。後半のPart.2では、女性リーダーとしての役割、これからの社会におけるスポーツの可能性やバドミントンの可能性について語ってもらっている。

6月14日には、タイバドミントン協会のパタマ・リースワットラクーン会長が来日し、ヨネックスとのパートナーシップ契約締結の調印式を行なった。IOCメンバー、BWF副会長の要職も兼務するパタマ会長が、同じ女性として、アリサ社長へ女性リーダーとして期待感を語り、エールを送っていたのが印象的だった

――6月にタイバドミントン協会とのパートナーシップ契約の調印式で、タイ協会のパタマ・リースワットラクーン会長がアリサ社長に「家庭での役割を果たしながら、社長として仕事をして社会に貢献する女性リーダーとして活躍に期待したい。何かできることがあれば、サポートしていきたい」とエールを送っていたのが印象的でした。ヨネックス初の女性社長となりますが、ご自身の役割というのをどのように考えていらっしゃいますか。

ヨネヤマ 世界の人口の半分は女性ですが、企業の中の社員の割合としても、代表などトップの割合としても、まだ女性は少ないです。これからもっと女性が働きやすい環境、女性や多国籍の社員を含め、多様な人財が活躍できる環境をつくっていきないと思っています。そうすることによって、世界のお客様にもっと貢献できるような体制を会社としてつくっていけるのではないかと。特に、私自身、子どもを生んで母親になってから、ずいぶんと、ものの見方、観点が変わりました。

――具体的にはどのような変化があったのでしょう。

ヨネヤマ 産休、出産を経て、自身が経験することで初めて分かったことが多く、周囲の人からの助けや思いやりがとてもありがたかったですし、そうしたコミュニケーションが大きな力になることを実感しました。

――多くの女性の課題でもある家庭と仕事の両立という部分ではいかがでしょうか。

ヨネヤマ 完璧に両立するのは難しいですが、時に仕事を優先して、時に家庭優先で調整していくことになるのだと思います。それを自分自身で「今はこういう時期だから、仕事を優先する」「今は家庭を優先」というふうに意識しながらバランスをとることが必要なのだと思います。本を読んだり、ほかの人の経験を聞くと、そんなイメージがあります。個人的には(両立は)始まったばかりというところで、いろいろチャレンジすることが多いです。

――完璧に両立しようと頑張る女性も多く、それが難しさにつながっている部分もあるかもしれないですね。

ヨネヤマ プレッシャーが大きいと、家庭も仕事もやりにくくなると思います。それは女性だけの課題ではなく、男性でも家族がいれば、育児や介護などが発生しますよね。ですから、会社として、女性でも男性でも家庭と仕事のバランスをもっと取れるような会社にしていきたいという思いはあります。

――なるほど。ワークライフバランスに関しては、確かに課題は性別を問わないですね。

ヨネヤマ そうですね。ただ、スポーツの世界は、やはり男性が多いなと感じます。私は大会などに行くと、周りが男性ばかりということがほとんどです。バドミントンの世界では、監督やコーチの男女比は半々ですか?

――やはり男性が多いですね。女性も引退後、指導の道に進む人は少なくないですが、やはり結婚・出産、家庭との両立でキャリアを中断することになりますから。

ヨネヤマ 女性が出産後も活躍できるようになるといいですね。

「バドミントンは世界中でプレーされていて、競技者の数も多い。でもまだメジャーなスポーツになっていないので、もっと活性化していきたい」

――ご自身もバドミントンをプレーした経験もあるとのことです。バドミントンという競技の印象やヨネックスとしての今後の取り組みについてお聞かせください。

ヨネヤマ バドミントンは世界中でプレーされていて、競技者の数も多いですよね。ただ、まだメジャーなスポーツになっていないので、そこをもっと活性化したいと思っています。個人的には、アメリカやヨーロッパ、日本でもそうですが、プレーするときにコミュニティーがある感じがすごくいいなと。アメリカでは認知度が高いスポーツではありませんが、アジアからの移民が、地元でそれぞれ新しいコミュニティーをつくって、バドミントンをプレーしている。例えばテニスと比べると、初心者でもすぐにプレーできる手軽さや楽しさがありますよね。上手になるのはまた難しいですが、幅広い人が楽しめる魅力的なスポーツだと思います。本当にエキサイティングなスポーツで、世界中でいろいろな可能性がある。先日、インドの関係者とリモートで会議をしたのですが、インドはトマスカップでの初優勝によって「これからバドミントンは爆発的に人気が出ると思う」と現地の方は話していました。実際、プレーする人も増えているそうです。インドで一番人気のあるスポーツになれば、どんどん競技者が増えて、おもしろくなりますよね。

――一方、日本では世界選手権、ダイハツ・ヨネックスジャパンオープンと2週連続でビッグイベントが開催されました。

ヨネヤマ 世界選手権は初の日本開催で、大変盛り上がりました。東京オリンピックは無観客の開催でしたが、今回はお客様に世界トップ選手たちのプレーを生で観ていただくことができました。さらに、同大会と翌週に大阪で開催されたダイハツ・ヨネックスジャパンオープンで山口茜選手が2週連続優勝するなど、日本選手の活躍もあり、日本のジュニアたちも大いにインスパイアされたと思います。

8月に行なわれた世界選手権ではプレゼンターとして表彰式に出席したアリサ ヨネヤマ新社長(写真左端)。女子シングルスでは、日本の山口茜選手をはじめメダルを獲得した選手たちに花束を渡し、祝福した

――それでは、今後のバドミントンの可能性、もう少し広くスポーツの可能性については、どのようにお考えでしょう。また、それに関して、ヨネックスはどのように寄与していきたいとお考えですか。

ヨネヤマ スポーツは、国や言語、文化などバックグラウンドが違っても一緒に楽しめるものなので、これからもどんどん広がっていくと思います。それはコロナ禍でも変わりません。バドミントンに関していえば、インドや中国など人口が多い国で、もっと多くの人が楽しむスポーツになって、もっと盛り上がっていくと思います。ヨネックスとしては、製品を作るだけでなく、まだバドミントンが盛んでない国にも、どんどん競技を普及していくことに今後も取り組んでいきたいと思っています。そのような取り組みは、レジェンドビジョンを通じて行なってきましたし、スポーツ自体にアクセスする余裕がない国もまだ世界にはたくさんあるので、そういった人たちを支援するようなこともできたらと思っています。

2017年、日本で開催されたレジェンドビジョンの様子。世界的な人気を誇るトッププレーヤーたちの「バドミントンをもっとメジャーにしたい」という思いに、ヨネックスが協力し、世界展開しているプロジェクトだ

Profile アリサ ヨネヤマ

1987年、アメリカ生まれ。カリフォルニア大学バークレー校、南カリフォルニア大学大学院修士課程修了後、2014年1月よりXYZ.COM LLCに入社し、マーケティングマネージャーを務めた。16年3月にヨネックス北米に入社、18年1月より同シニア・マーケティングマネージャー。19年4月、ヨネックス株式会社執行役員(現任)、マーケティング本部副本部長、ヨネックス北米シニア・マネージャーを兼任。21年4月、ヨネックス北米取締役(現任)。同6月よりヨネックス株式会社取締役、マーケティング本部長、グローバル戦略室長を務めている。

取材/バドミントン・マガジン編集部

写真/矢野寿明(インタビュー)、BBM、ヨネックス

 

投稿日:2022/10/20
■関連キーワード

   

人気記事ランキング

閉じる