【東京五輪】「自分がどこまで成長できるのか見たい。それが一番のモチベーション」(ビクター・アクセルセン)<男子シングルス・メダリスト

東京2020バドミントン競技は、8月2日に男子シングルスの3位決定戦、決勝が行なわれ、デンマークのビクター・アクセルセンが金メダル、中国の諶龍(チェン・ロン)が銀メダル、インドネシアのアンソニー・S・ギンティンが銅メダルを獲得。同日の表彰式後に行なわれたメダリスト記者会見の質疑応答を抜粋してお届けする。――ビクター・アクセルセン選手、おめでとうございます。1996年にホイヤ―ラーセン選手が金メダルを獲得して以来のデンマーク選手のシングルス制覇となりました。また、ビクター選手はリオ大会でも銅メダルを獲得しています。今日の決勝後、諶龍選手と何か長く話をされていましたね

アクセルセン はい。諶龍選手とは何度も試合を重ねております。彼は私にとって、長年インスピレーションの素となっています。私のコートの方に来て、おめでとうと言葉をかけてくれました。すごくいいパフォーマンスができましたし、彼と一緒にこの試合をできて、とてもうれしく思います。

――デンマークの皆さんにメッセージがあれば

アクセルセン デンマークに戻って、家族と祝いたいです。フィアンセ、娘と祝うのを楽しみにしています。彼らは日本に来ることはできませんでしたが、スクリーンで彼らと会うことはできました。しかし、やはり帰国後、一緒に祝いたいと思います。

――諶龍選手、オリンピック3大会で銅、金、そして銀メダルを獲得しました。決勝に2回連続出場です。リオ大会からのこの5年間、どんな旅路でしたか。そして、決勝を戦ったビクターにも一言お願いします。

諶龍 まず、ビクターにおめでとうと言いたいです。この金メダルを、心から楽しんでいただきたいと思います。この5年間は、長い5年間でした。2016年に金メダルを獲得したあと、いろいろな困難がありました。敗戦もたくさんありました。そして、負けるたびに、自分を信じることができなくなりました。本当に自分は勝ち続けることができるのか、疑念が湧いてきました。しかし、チームメートやコーチにサポートしてもらいました。大丈夫、問題ないと言葉をかけてもらいました。2018年、コーチであるリー・ロンが戻ってきて、また私をサポートしてくれました。私の復活を支えてくれました。東京五輪では今までよりもいいパフォーマンスをしたいと思い、この1年間必死に努力を続けてきました。大会が1年遅れたということで、ある意味、準備の時間が増えました。より長い時間をかけて、自分の弱点を克服することができました。最終的には金メダルを獲得することはできませんでしたが、初日から今日にいたるまで、すべての試合を自分のゲームプラン通りにプレーできました。金メダリストほどではなかったにしろ、2番目にすぐれた選手となれたと思います。

――アンソニー・ギンティン選手、インドネシアの男子シングルスでメダルを獲得するのは2004年のタウフィック・ヒダヤット以来です。今のお気持ちは

ギンティン 最初に金メダリスト、銀メダリストにお祝い申し上げたいです。私は本当にハッピーです。今日の成果にうれしく思っています。結果は銅メダルですが、非常に感謝しています。この結果は私だけでなく、家族や友達にとっても意義深いものだと思っています。タウフィックとソニーがアテネでメダルをとってから17年ぶりなので、本当にうれしく思っています。

左から諶龍(中国)、アクセルセン(デンマーク)、ギンティン(インドネシア)

――アクセルセン選手、おめでとうございます。2016年に銅メダルを獲得したときからのモチベーションは

アクセルセン リオ大会に出場できたことは私にとってきわめて重要な経験でした。当時、諶龍選手は私よりもずっと強い選手でしたが、そこからたくさん学び、オリンピックは貴重な経験となりました。リオでメダルを獲得したとき、とてもうれしく思いましたが、もっといいパフォーマンスをしたいとハングリーになりました。オリンピックでいいパフォーマンスをするためには、ハードワークが必要です。諶龍選手、ギンティン選手のすばらしいパフォーマンスにもお祝いを申し上げたいです。このような大会で勝つためには、ハードワークにプラスして幸運が必要です。私にとって幸運だったと思います。

――あなたのキャリアでの今後のモチベーションは?

アクセルセン もちろん、この優勝はすばらしいと思います。でも、一番のモチベーションは改善していくこと、強い人たちと戦い続けることです。これは旅路のようなものです。もちろん勝つことはいいことですが、どこまで成長できるかを自分自身が見たい。それが大きなモチベーションになっています。

――諶龍選手へ。アクセルセン選手と長い間、話をしていましたが、どんな話をしていましたか。そして、お子さんが生まれてから、息子さんとなかなか一緒の時間を過ごすことができなかったと思いますが、帰宅後、どんな話をしたいですか

諶龍 決勝後、ビクターのコートへ行って、「おめでとう」と伝えました。そして、この金メダルを心から喜んで、楽しんでほしいと伝えました。また、彼のこれからの幸運を祈り、さらにすばらしい試合を繰り広げることができるようにと伝えました。息子とは毎日、ビデオ電話で話しています。息子に金メダルを持ち帰ることはできませんでしたが、私は常にコートでは最高のパフォーマンスを見せたいと思っていますし、息子のロールモデルになりたいと思っています。

――アクセルセン選手、昨年のデンマークOPはケガで棄権しました。それほど前のことではありません。その期間の経験を話していただけますか

アクセルセン 10月に足首が痛くなり、検査をしたところ、手術をしなくてはいけないことがわかり、手術をし、治療をしました。これは楽しい経験ではなかったですが、ケガはアスリートの生活の一部です。幸い、まわりの方がサポートしてくれました。しかし、かなり努力しなければ、復帰することはできませんでした。今は特に問題はなく、これからも一歩ずつ進んでいきたいと思っています。

優勝を決めた瞬間、涙を流して感情を爆発させたアクセルセン

――諶龍選手へ。中国チームの中で最高齢です。リーダーとして銀メダル獲得。中国は6つのメダルを獲得しましたが、チームメートに何を伝えたいですか。今後に関しては?

諶龍 東京に来る前に、チーム全体として勝利を求めていると感じました。国際大会が開催できませんでしたし、その前も、中国チームは国際大会であまり活躍できていませんでした。ですので、日本に来る前に気合いを入れたんです。興奮して、非常にワクワクしていました。2つの金メダル、4つの銀メダルを獲得できました。また、混合ダブルスでの金銀2つのメダル獲得は初めてです。最初のメダルマッチで金銀を取れたということは、チーム全体でモチベーションが高まりました。残念ながら金メダルを獲得できなかった種目もありましたが、チームメートは全員が最善を尽くしました。過去のオリンピック大会に出たことがあるのは私だけです。しかし、若いチームメートからたくさんの学びがありました。若い選手と時間を過ごすと、私自身があまり緊張しないと言うことに気づきました。というのも、彼らはあまり緊張していないんです。会場でも選手村でもリラックスして話をしたり、楽しんでいる。また、ほかのスポーツの中国チームからもモチベーションをもらいました。たくさんのエネルギーをほかの選手からもらって、よりよい準備ができました。これは中国チームにとって終わりではありません。今後の大会に関しても幸運を祈りたいと思います。

――諶龍選手、今後のキャリアについて教えてください

諶龍 試合のあとで、多くの記者から今後のキャリアについて聞かれました。今は少し休みたいです。家族とあまり時間を過ごすことができなかったので、家族ともう少し時間を過ごしたいと思っています。そして、家族と今後どうするか話し合いたいと思います。私の体は非常にいい状態です。だから今、とても自信があります。誰も将来についてはわからないというのが正直なところです。

決勝トーナメントでは、リー・ジジャ(マレーシア)、周天成(台湾)、ギンティンとのタフマッチを制した諶龍。2連覇は果たせなかったが、今回で3つ目のメダルを獲得した

――アクセルセン選手、このように忍耐強く最高のパフォーマンスを見せることは今までなかったのではないでしょうか。なぜこのように最高のパフォーマンスを発揮できたのでしょう

アクセルセン オリンピックの決勝ということで、緊張するのはわかっていたので、今までこのためにトレーニングをしてきたんだと自分に言い聞かせました。ここで勝つためにはリラックスして、忍耐強く、チャンスをとらえて、体を信じて、直感に任せて試合をしようと思いました。そして、ありがたいことに、その通りに試合ができました。

――ギンティン選手へ。2012年に諶龍選手は銅メダリストでしたし、2016年にアクセルセン選手は銅メダリストでした。あなたももしかしたら、今後、金メダルを獲得できるのではないでしょうか

ギンティン 私もそう考えていたんです(笑)。そう願っています。もちろん、私のスキルやメンタリティ、身体能力も強化しないといけないと思っています。次のオリンピックはもっと厳しい戦いになるでしょう。すべての選手たちが金メダルをめざして戦うわけです。私にとっても、東京大会が最大の経験になったと言えると思います。

取材・構成/バドミントン・マガジン編集部

写真/Getty Images

投稿日:2021/08/03

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