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【日本代表総括】「五輪レース期間中のケガがとくに心配」<朴柱奉監督>

アスリートの夢舞台である東京五輪を翌年に控えた2019年は、その出場権争いとなる“五輪レース”が4月末にスタートした。国内外の選手としのぎを削る日本代表は、今年も世界選手権やワールドツアーなどの国際大会で多くの好成績を残している。ここでは、その日本代表を率いる朴柱奉ヘッドコーチによる、2019年の代表総括を紹介する。(取材日/11月30日:全日本総合期間中[準決勝]に行なわれた会見より)

※会見はWTファイナルズ(12月11日〜15日)開催前のため、記事内の成績や世界ランクなどについては当時のまま

朴柱奉HC

――2019年を総括して

朴HC 今年一番よかった成績は世界選手権です。金2つ、銀3つ、銅1つを獲得できました。2018年の結果がよかったので、大会前はそこまでの成績は少し厳しいかなと思っていましたが、昨年よりも銀メダル一個が入ったので、それがよかったと思います。

逆に残念だったのは、5月のスディルマン杯(中国・南寧)。決勝で戦った中国とそれぞれいい勝負ができましたが、結果として0−3で負けたのは悔しかったです。

(個々の種目では)男子シングルスの桃田賢斗選手がよかったですね。(国際大会で)10優勝、そのうちSuper1000〜500の大会だと8回の優勝です。世界から見ても今年ベストの成績を残しました。五輪レースも、順調に進んでいると思います。

今後、桃田選手のライバルとなるのは、インドネシアのギンティン選手や中国の石宇奇(シー・ユーチー)選手、諶龍(チェン・ロン)選手などです。石宇奇選手にはスディルマン杯の決勝で負けています。その後は足首のケガで遠征に参加しなかったので、桃田選手との直接対決はありませんでしたが、来年からフルで戻ってくるので、どう戦っていくかが大事になると思います。

12月のWTファイナルズでも優勝を飾り、優勝数を11に増やした桃田賢斗。世界ランクポイントでも頭ひとつ抜け出し、東京五輪出場もほぼ確実なものした

女子シングルスは、ワールドツアーで2回優勝。山口茜選手がインドネシアOP(S1000)とジャパンOP(S750)を勝ちましたが、そこでピークに。その後はケガの影響で世界選手権、中国OP(S1000)、韓国OP(S500)、デンマークOP(S750)と1回戦負けが続きました。これがとても残念ですね。ドロ―も厳しいかったですけど、試合の感覚が戻っていなかったです。奥原希望選手は、世界ランク1位まで上げたのはよかったですが、優勝がなかった。来年は頑張ってほしいです。

男子ダブルスは、世界ランクで上位にいる園田啓悟/嘉村健士は順調かなと思います。あとは、遠藤大由/渡辺勇大も6位以内にいて、(五輪2枠を手にするためには)遠藤/渡辺がどこまでできるかがポイントになってくると思います。海外でいうと、インドネシア(ギデオン/スカムルヨとセティアワン/アッサン)と、中国(李俊慧[リ・ジュンフイ]/劉雨辰[リュウ・ユチェン])が強かったと思います。

山口(左)はアジア選手権、ドイツOP(S300)でも優勝。奥原は世界選手権、ジャパンOP、デンマークOPなどハイクラスな大会などを6大会で準優勝の成績を残した

女子ダブルスは世界ランク2・3・4位でしたけど、よかったのは世界選手権まで。世界選手権で日本選手の決勝ができましたが、その世界選手権後は、成績がストップしている印象です。そのぶん、いまは韓国がレベルアップしています。中国やインドネシアも結果を出しているけど、韓国が強い。そして、日本はその韓国を相手にメンタル面での弱さが出ています。五輪レースでは、韓国の4ペアや中国の陳清晨(チェン・チンチェン)/賈一凡(ジャ・イーファン/中国)などが、日本のライバルになるでしょう。

ミックス(混合ダブルス)は、渡辺勇大/東野有紗が世界ランク3位まで上げています。優勝が2回(マレーシアマスターズと香港OP)、準優勝も2回という成績なのですが、中国トップ2(鄭思維/黄雅瓊、王懿律/黄東萍)以外にはいい勝負ができていると思います。ただ、中国2ペアにはスピードとパワーで負けているので、こことの勝負が今後も大事になってきます。

今季はコンスタントに上位成績を残している渡辺/東野(左)。五輪レース期間中に中国の壁を崩すことが、本番でのメダル獲得につながりそうだ

全体の総括としては、世界選手権後、多くの選手たちがストップしている印象です。この理由は、世界選手権期間中に、女子ダブルスの米元選手(小春/田中志穂)がアキレス腱断裂をしてしまったことも影響しています。五輪レース期間中で、ケガがとくに心配です。選手たちにとっては五輪レースもそうですが、東京五輪も大事にもなってくるので、ケガのリスクを考え、強化合宿のトレーニングのプログラムをダウンさせてリカバリーがメインになるときもあります。ですから、今後はもう一回(練習内容を)プッシュしないとダメかなと思います。

女子ダブルスは日本、中国、韓国による争い

――五輪での金メダル候補となる桃田選手ですが、本番でのプレッシャーに対する取り組みなどはありますか?

朴HC 世界選手権や大きな大会(Super1000など)を経験することが、プレッシャーの勉強になるのだと思います。ただ、試合中のプレッシャーに関しては、桃田選手のスタイル的に、(プレーの)エンジンがかかるのが遅いというのがある。スタートがあまりよくないので、もう少し早くエンジンをかけてほしいですね。最初にうまくリードすることができれば、プレッシャーが少ないなかで試合ができると思います。

――女子ダブルスの上位に福島由紀/廣田彩花、松本麻佑/永原和可那、髙橋礼華/松友美佐紀と3ペアについては?

朴HC 3ペアが上位にいますけど、今後も大会で結果を出し続けるにはメンタルが重要でしょう。3ペアともに、1回戦から準々決勝まではいけるイメージですけど、準決勝、決勝となってくるとパフォーマンスに差が出ている。代表のメンタルトレーナーの方もいるので、そういった方々の協力も得ながら、あとは、引退した五輪選手などに自分の経験を話してもらうなど、メンタルの強化プログラムも取り入れることを考えています。

――女子ダブルス3番手の髙橋/松友ペアについて。

朴HC ピンチだと思います。10月のデンマーク(初戦敗退)、フランス(16強)、11月の福州中国(16強)、香港(8強)の4大会で、好結果が出せなかったですから。それに高ポイントが獲得できるWTファイナルズも出場できなかったので、状況からみるとピンチだと思います。ただ、11月後半の韓国マスターズ(S300)では久しぶりにいい試合ができていたので、あのときの試合が1月からの五輪レースで出せればいいなと。何回か優勝しないと苦しいですが、残りのラストチャンスを頑張ってほしいです。

――奥原選手の準優勝が多かった。あと一歩が足りなかった要因は?

朴HC 11月の福州中国OP(S750)が一番チャンスがあったかなと思います。ただ、奥原選手は、動きの部分では一番安定していたと思います。優勝に届かなかった要因をいうなら、チャンス球を決めきれないことが多かったかなと。もっと試合中のチャンス球をはっきり決められるようになると、結果も出てくるはず。奥原選手は体こそ小さいですが、コート内のスピードはあります。どうしても高い身長の選手には苦戦することが多いですけど、相手の攻撃のリズムを崩せばチャンスがある。ラリーゲームを得意とするだけに、(チャンスを一発で仕留める)簡単なポイントを増やしてほしいですね。

――女子ダブルスの韓国ペアが成長しているが、日本ペアに対して強いのは何か理由があるか?

朴HC 韓国と日本の違いについては、韓国が日本と対戦するときのファイティング(闘争心)に違いがありますね。スタートから違うので、ここが日本と韓国の差なのかなと思います。あとは、韓国の攻撃がとてもいいので、パワーとスピードで負けている印象です。昔からなのですが、日本はネットプレーが他国に比べて弱く、ハーフコートでのプレーにもアグレッシブな部分が足りない。ミスが少ないのはいいですが、もっとハーフコートからプレッシャーをかけたり、ネット前で攻めてもいいのかなと思います。いずれにせよ、いまの女子ダブルスは韓国と中国と日本の3カ国が抜けているので、向かってくる韓国に対してはしっかり対応していきたいと思います。

――他の強豪国が、以前に比べて日本対策をしている印象があるか?

朴HC 女子ダブルスは、中国が日本のことを一番マークしています。その理由に、中国は韓国の元代表監督(姜京珍/1997年全英OP男子ダブルス優勝)を招聘しています。中国が海外からコーチを入れるのは初めて。そのコーチと中国の大会で話をしましたが、「日本に勝つために」韓国の元監督を迎え入れたそうです。

――桃田選手は年間10優勝や連続優勝など安定感が高まっている。具体的な理由はあるか?

朴HC 昨年よりもフィジカルがよくなったことがあります。たとえば、ギンティン選手とはファイナル勝負までいくのですが、最後は桃田選手が勝つ、という試合が多いです。最後まで勝ちきれるのは、フィジカル面が向上しているからですし、あとは何回も優勝している自信というのも大きいでしょう。今後の五輪レースの中では、先程も話した通り、スタートのときに早くエンジンが動かせるようにしてほしいなと思います。

取材・構成/バドミントン・マガジン編集部

写真/BADMINTONPHOTO、菅原淳

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