バドミントンにおいて、ラケットはプレーヤーの「手」と同じ役割を果たすといっていい。そのラケットのなかでも「グリップ」は、選手によってテープの素材や巻き方が異なり、独自性が出やすい部分だ。ここでは、トップ選手のグリップへの「こだわり」に迫る。
【連載】Vol.11
山口茜(再春館製薬所)
やまぐち・あかね◎1997年6月6日生まれ、福井県出身。全国小学生大会選手権4連覇など、ジュニア時代から全国タイトルを次々と獲得。16歳(高校1年)でヨネックスOPジャパンをSS史上最年少で制し、IHでは史上初となる3連覇を達成。16年から再春館製薬所に入社し、同年のリオ五輪でベスト8に入っている。156㎝、右利き、A型。
――グリップに対する“こだわり”はありますか?
こだわりは、とくにはないですね。もともと巻いてあるグリップをはがして、グリップエンドの部分がポコッとへこむのが嫌なので、ホワイトテープを巻いて…。
――十分こだわっていると思います。何周ぐらい巻くんですか?
そこは適当で、たぶんラケットによって全然違うと思います。巻きすぎちゃうこともあって、ふくらんでしまったらはがします。
――グリップエンドの部分がへこんでいると、やりづらいということですか。
やりづらいというより、自分で見た感じ、気になるということです。ホワイトテープがなくても、プレーとしては全然大丈夫です。
――グリップテープを巻く前に、アンダーラップを巻く選手は多いですけど、山口選手は巻かないんですね。
はい。ただ、昔は父に巻いてもらっていたので、そのときにアンダーラップを使っていたかどうかは、わかりません。自分でやるようになってからは、巻いていないです。
――テープはタオルではなくウエットタイプですね。
ウエットタイプを、だいたい半分ぐらいかぶせながら巻きます。見た目はきれいに一定に。巻き直す頻度にこだわりはなくて、汚いなと思ったり、ちょっとヒマだなと思ったときに、巻き直しています。
――色について、こだわりはありますか?
色は白か黄色で、基本は白。黄色は白と同じ感じがするんですけど、黒とか赤は同じ種類でも、巻いているときに引っ張った感じ、伸び具合とか違う感じがして……。ほかの選手も、そう感じていると思います。
――グリップエンドに入っているのはイニシャルでしょうか。そこは“こだわり”ですか?
練習では適当に選んでラケットを使うんですけど、試合で使うラケットは5本あって、それぞれ家族5人のイニシャルが入っています。「昨日は“自分”でよかったから、今日も“自分”でいこう」とか、「昨日は“お父さん”でミスが多かったから、今日は“お母さん”にしよう」とか(笑)。あと2本増えたら、次は、おじいちゃん、おばあちゃんにします。
――いいお話ですね。ご家族に対する愛情が感じられます。
実家には、これまで使い終わったグリップテープ巻いて作っている座布団があるんですよ。中学校のときぐらいからかな…、自分のものと両親のものが混じっていて、最初は適当に巻きはじめたのが円形になってきて(と、写真を見せてくれる)。
――これはすごいですね! こんな形になっているのは、初めて見ました。
最初は鍋敷きにしようと話していたんですが、「グリップテープは溶けるからダメじゃん!」と気づいて…。まあ、きれいとはいえないですし、座布団にしても相当硬いんですけどね(笑)。
取材・構成/バドミントン・マガジン編集部(取材日2017年5月6日)