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’14富岡高アベックVの軌跡 インターハイplayback①  

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インターハイ史上初の快挙

インターハイで初めてバドミントン競技が行なわれたのは1950年。昨年は65回目の記念大会でもあったが、IHの長い歴史のなかで団体戦、男女アベック優勝を遂げた学校はいままで一度もなかった。しかし、その歴史に新たな名前を刻んだチームが誕生する。それが福島県の「富岡」高校だ(※1)。

 

創部は男女ともに1995年。もともとは普通の県立高校だった富岡高だが、06年に中高一貫の教育プログラムが実施されることになり、スポーツの強化対象として選ばれたのがサッカー、ゴルフ、そしてバドミントン部だった。全国からバドミントンでの活躍を夢見る小学6年生の応募を受け付け、選抜された選手のみが高校から徒歩15分の位置にある富岡第一中に入学(※2)。富岡高と富岡第一中が連携し、日本にとどまらず、世界で活躍する選手の育成を目標に新たな一歩を踏み出した。

 

私立の中高一貫教育とは違い、県内の公立中学と高校の一貫指導はほとんど例がなく、まさにゼロからのスタート。新生富岡を任されることになった大堀均監督は「最初は暗中模索の状態。すべて手探りのスタートでした」と、その当時の心境を振り返っている。

それでも「強くなりたい」という志を持った選手が集まったチームだ。結果はすぐに現れ始める。07年に男子がIH団体初出場を果たすと、女子も08年にIH団体で初出場を決めた。個人戦でも08年高校選抜で大森康平(現丸杉)が男子シングルスで準優勝。その後も個人戦で毎年上位に進む選手が出てくるようになった。

 

新たな一歩を踏み出してから4年後の2010年。富岡高はIH団体で男女ともにベスト4に入る活躍を見せた。そこからの飛躍はご存知の通り。11年は東日本大震災直撃の影響を受けながらも、困難を乗り越えて再び男女団体4強。そして12年には、大堀彩(現NTT東日本)を軸とした女子が念願の団体初制覇を成し遂げる(男子は準優勝)。13年には保木卓朗/小林優吾(現トナミ運輸)を擁する男子が、埼玉栄高の9連覇を阻止し、高校界の頂点に立った(女子は準優勝)。

2年連続で男女決勝に進出し、それぞれが結果を出した富岡。2014年千葉インターハイは、その富岡にとって「結実」の瞬間が訪れることになる。

 

苦しみながらつかんだ団体アベック優勝

 

最初に勢いをつけたのは女子だ。準々決勝で強豪・九州国際大付を3−0、準決勝で2年の山口茜を軸とする勝山を再び3−0のストレートで下すと、決勝は夏に強さを発揮する青森山田。試合は青森山田がダブルス2本を制して王手をかけるも、富岡がシングルスで仁平菜月、川上紗恵奈が連勝して予想通りの大接戦に。そして第3シングルスでコートに立ったのが、3年のエース・大堀彩だ。

ポイント源として活躍した大堀彩

 

相手は青森山田の屋台骨を支えてきた荒木茜羽(現七十七銀行)で、第1ゲーム前半リードしたのはその荒木だった。11−5と6点差をつけて試合の主導権を握る。しかし、V奪還をめざす大堀も意地を見せた。じわじわと点差を詰めると、20−20のスコアまで持ち込む。すると、抜け出したのは大堀。スマッシュ、プッシュで攻め立てて25—23、1ゲームをつかんだ。

これで勢いにのった大堀は、第2ゲームも圧倒。最後は21−14のスコアで制し、富岡が2年ぶり2度目の歓喜を会場に響かせた。

 

女子が歓喜の輪を作るすぐ近くで、男子はライバルとの接戦を繰り広げていた。準決勝では前年決勝を争った埼玉栄と対戦し、3−2の激戦の末に富岡が勝利。決勝では春の高校選抜を制した東大阪大柏原との勝負となった。

第1ダブルスは富岡2年の渡辺勇大/三橋健也が、柏原のエース・常山幹太/下農走(ともに現トナミ運輸)をファイナルで下すも、第2ダブルスは柏原ペアが取り返す。勝負はシングルス3本に委ねられると、第1シングルスは富岡の光島理貴がねばり強く戦い、同じ2年生の小倉由崇を15本、20本で抑えて王手をかける。

しかし、柏原はこの後に常山と下農が構えており、富岡としては最後まで気が抜けない状況だった。だが、ここで輝きを放ったのが3年の古賀穂。第2シングルスで下農と対戦すると、お互いに1ゲームを奪い合い、ファイナル勝負に。すると、最後は古賀が高い集中力で下農を振り切って勝利。富岡が史上初となる男女団体アベック優勝を完遂させた。

2冠を達成した古賀

これまでアベック優勝に王手をかけたのは、84年の上尾(埼玉・男子V、女子準V)と08年の埼玉栄(男子V、女子準V)の2チームのみ。男女同じ都道府県が優勝したのも、97年に埼玉の上尾(男子)と埼玉栄(女子)が達成したほかは、どこも手にしていない快挙だ。

 

「アベック優勝を目標に掲げてきて、それを果たすまではOB、OG、保護者も応援にくるといっていたんです。もちろん団体戦メンバーだけではなく、控えの選手含めて全員でのアベック優勝だったと思います」(大堀均総監督)

 

団体後の個人戦では、男子シングルスで古賀が全中以来の全国優勝を遂げると、ダブルスでも2年生ペアの渡辺勇大/三橋健也が準優勝。富岡の“3冠”にも、あと一歩まで迫る活躍を見せた。

「決勝の内容に納得はしていませんが、最後の最後でこういう結果が得られてうれしい。悩んでいるときも支えてくれて、応援してくれた方々のおかげです」(古賀)

 

 

富岡旋風が吹き荒れたあの夏から1年。今年もまた、高校生にとって熱い夏がやってくる。富岡は男女ともに今回も優勝候補の一角。2年連続団体アベックVという前人未到の記録に挑む。

 

※1 富岡高は今年から高体連主催の大会では「ふたば未来学園高」との合同チームとして出場。チーム名は富岡ふたば未来学園高。

※2 東日本大震災の影響で現在はサテライト校である猪苗代高で活動

 

 

 

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