バドミントンにおいて、ラケットはプレーヤーの「手」と同じ役割を果たすといっていい。そのラケットのなかでも「グリップ」は、選手によってテープの素材や巻き方が異なり、独自性が出やすい部分だ。ここでは、トップ選手のグリップへの「こだわり」に迫る。
【連載】Vol.13 西本拳太(トナミ運輸)
にしもと・けんた◎1994年8月30日生まれ、三重県出身。小俣中-埼玉栄高-中央大を経て、2017年にトナミ運輸入社。小中高時代のビッグタイトルこそないが、大学では1~3年のインカレでシングルス3連覇を達成。4年時には全日本総合を制覇し、男子シングルスでは16年ぶりの学生王者となった。今年は日本A代表として世界を転戦。10月のフランスOPではSS初の準優勝に輝いた。180㎝72㎏、右利き、B型。
「グリップエンドは“ギョウザ”っていわれます(笑)」
――グリップに対する“こだわり”はありますか?
自分でいうのもナンですけど、ものすごく几帳面です!

――即答でしたね。では、どんなふうに巻いていくのか、教えてください。
まず、もともとあるグリップをはがして木の状態にして、アンダーラップを巻きます。グリップエンドの部分は太くしたいので、細くよじって3周。握る部分はあまり重ねないように薄く1周。そのあと、グリップテープって、斜めにカットされているほうから巻き始めると思いますけど、逆からスタートします。
――カットされていないほうから巻いていくんですか?
はい。グリップエンドを包み込むように5周。チームの安村(康介)コーチには、「ギョウザ」っていわれます(笑)。


――それほど包み込んで膨らみを持たせるのは、どうしてですか?
僕は、試合中に結構転んだりするんです。ラケットを床に着いたとき、グリップエンドの部分が破れてボロボロになってしまうのがイヤで…。誰かのラケットを見て、ここまで厚くなかったですけど、「これだったら安心して滑れるじゃん!」って(笑)。
――転んで滑るのが前提なんですね(笑)。握る部分については、どうですか?
ちょっとすき間をあけながら巻きます。手はデカいけど、細めです。太いとスマッシュなんかは力が入って打ちやすいけど、細かいショットを打つには細めがいい。太いと手首を使うショットのとき邪魔になるというか…、細いほうが打ちやすい感覚があります。
――使い込んでいるグリップを見ると、穴があいていますね!
手がデカいのに細いのを使っているから、ちょっとすれるみたいですね。手の中で遊びがあるほうが操作しやすいんですよ。滑らせながらも、グリップエンドが止めてくれるという。
――そして、巻き終わりがものすごくキレイです!
終わり方がキレイじゃないと、ホンットにイヤなんです。最初にグリップエンドを5周巻くのは、キレイに巻き終わるためという理由もあります。最後は付属品のテープを使わず、裏面のテープで留める。ここもキレイじゃないとイヤで…、変なところで几帳面なんですよね(笑)。


――本当にキレイに巻けていますよね! いつ頃からこのグリップになったんですか?
割と最近、1年たつかたたないかぐらいです。というのも、ずっとタオルグリップがいいと思って使っていたんですよ。ところが、富山は寒くて、冬はタオルグリップがカチカチになって痛くて、肌が弱いからあかぎれになったりして…。もともと手汗をかかないし、ウエットにしてみたら、「あ、意外にいいかも」って。いまさらなんですけど(笑)。
――巻き直す頻度は、どのぐらいですか?
1週間ぐらいですかね…。汚くなったらというより、ズレはじめたら巻き直します。ただ、巻き直してすぐ試合に使うのはイヤですね。手汗をかかないので、手の中でうまく滑らないんですよ。理想の状態は、練習で1回使った後ぐらいです。
――色については、どうでしょう。やはり、チームカラーの黄色ですか?
色のこだわりはなくて、みんな黄色だから黄色にするか…、というぐらいです。いまはラケットもウエアも黄色なので、だいたい黄色か、白か黒になりますね。ただ、ウエットタイプもタオルタイプも、色によって感触が違うんですよ。
――そういう話も聞きますけど…、本当にそうなんですか?
それはもう、メッチャ感じます! 個人的な感想ですけど、黄色が一番ほどよいです。
――巻き方から感触まで、「こだわり派」ということがわかりました。ありがとうございました!
取材・構成/バドミントン・マガジン編集部