【トマス杯】世界一は届かず。日本男子は中国に1−3で敗れ準優勝<決勝戦>

5月27日にタイ・バンコクで開催された「トマス杯・ユーバー杯2018」最終日は、トマス杯の決勝戦、日本VS中国が行なわれた。

ト杯ユ杯最終日
試合前に円陣を組んだ日本

4年ぶりの歓喜まで、あと1勝。2度目の世界一を目標に、一致団結して決勝まで勝ち上がった日本男子。トップシングルスの桃田賢斗の活躍がチームに安定感をもたらし、準決勝では前回王者のデンマークを3−2で撃破。総合力で優勝を飾った女子に対し、男子は連日の接戦をモノにしながら成長を遂げ、頂上決戦の場にたどりついた。

その決勝の相手は前回のトマス杯ベスト8に終わっている中国。失ったプライドを取り戻すため、今大会にはシングルスにリオ五輪金メダリストの諶龍(チェン・ロン)、全英王者の石宇奇、(シー・ユーチー)、そして林丹(リン・ダン)を主軸におき、ダブルスも世界王者の張楠(ツァン・ナム)/劉成(リュウ・チェン)と、李俊慧(リ・ジュンフイ)/劉雨辰(リュウ・ユチェン)で挑む。どの選手・ペアも世界ランキングでは一桁台だけに、日本にとっては最大の難関となった。

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日本が中国に勝つためのカギは、第1シングルス。その重要な役割を担った桃田賢斗は、4月末のアジア選手権で下している諶龍と激突した。

世界が注目した第1ゲームは、桃田の時間となった。「ネット前のプレーが生命線だと思ったので、自分らしく踏み込めたのがよかった」と、得意のヘアピンで諶龍を苦しめる。上ってきたロブに対しても、緩急をうまく使って体勢を崩し、チャンスとみるやスマッシュ一閃。諶龍も強打で押し切ろうとしたが、桃田のレシーブを崩すまでにはいたらなかった。第1ゲーム、21-9。中国の大応援団も、このときばかりは桃田のプレーにため息をつくばかりだ。

第2ゲームも桃田ペースは変わらない。「決められるときに、ライン際にスマッシュを決められたのがよかった」と、常に先行しながら試合を進めた。13-12と差をつめられても、ネット前だけではなくドライブ勝負で押し返して17-14。最後まで諶龍に反撃の糸口をつかませなかった桃田が、最後は21-18で退け、日本が先勝した。

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ネット勝負を制した桃田賢斗

第1ダブルスはこれまで全試合に出場していた園田啓悟/嘉村健士を下げ、井上拓斗/金子祐樹を起用。第2ダブルスに園田をまわし、若手の渡辺勇大と組ませるサプライズオーダーで勝利をつかみにいった。

第1ダブルスに起用された井上/金子は張楠/劉成と対戦したが、相手の強打に押されて第1ゲームは10-21で先制を許す。第2ゲームはようやくリズムを取り戻したが、主導権を握るまでにはいかず18-21で敗戦。「サービスレシーブからの4球目の処理が遅くて、そこからどんどん詰められる展開が多かった。どうにかしようとしたけど、相手は格上。すぐに対応されてしまった」(井上)。これで1−1となり、第2シングルスに進む。

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0−2で敗れた井上拓斗/金子祐樹(右)。2ゲームは好ラリーを展開したが、あと一歩が届かなかった

その第2シングルスの西本拳太は石宇奇と対戦。全英王者に対して攻撃のチャンスをつかめず、第1ゲーム12本で封じられる。第2ゲームもラリーで食らいついていったが、勝負強さや経験値では相手が一枚上手だった。17オールからスピードを上げた石宇奇が4連取で勝利。「17オールまで追いついた場面まではよかったけど、そのあとの気持ち、戦術の面で相手より足りなかった」(西本)。中国が2−1として、優勝に王手をかけた。

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西本拳太は第2ゲーム17オールまで持ち込んだが、ここからのポイントが取り切れず

日本は負ければ終わりの場面、第2ダブルスには園田/渡辺がコートに立つ。190cm超えの長身ダブルスだったが、第1ゲームを奪ったのは園田/渡辺だ。「合宿中の練習で何回も(組んで)やっているので、ある程度の動きはわかっている部分もあった」と園田。渡辺も「覚悟を決めてできたし、僕らは出し切るだけだった。腹をくくっていきました」と、相手の強打にも臆せず立ち向かう。ともに素早い反応で前に飛び出してポイントを奪うと、16-15から先に抜け出した園田/渡辺が、21-17で先制する。

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急造ペアでも互角に渡り合った園田啓悟(右)/渡辺勇大

第2ゲームは、序盤でリードを作った中国ペアが、そのまま後半までペースを握って試合を進めた。日本ペアも13-19から19-20まで差を詰めたが、ここは李俊慧/劉雨辰が押し切り、勝敗の行方はファイナルゲームへ。

どちらも譲れない勝負は、好ラリーの連続となる。第2ゲームこそ出だしで抜け出された園田/渡辺だったが、ファイナルゲームでは鋭い飛び出しもみせ10−11。その後は1点を交互に奪い合うシーソーゲームが続いたが、先に20-18でマッチポイントを手にしたのは日本。しかし、あと一点が遠かった。「先にマッチポイントを握り、そのあとも20オールになった。ここで思い切っていけばよかったけど、自分が引いてしまった」(園田)。

最後、興奮に包まれた会場で勝者の雄叫びをあげたのは、中国の李俊慧/劉雨辰。優勝が決まった瞬間、コートに飛び込む中国選手たちは、6年ぶりの歓喜に酔いしれる。日本は準優勝。世界一は届かなかった。それでも、中国との価値ある接戦が、これからの日本を強くするに違いない。

◆トマス杯/決勝戦

日本 1−3 中国

MS1桃田賢斗②〔21−9、21−18〕0●諶龍61分

MD1井上拓斗/金子祐樹●0〔10−21、18−21〕②張楠/劉成40分

MS2西本拳太●0〔12−21、17−21〕石宇奇45分

MD2園田啓悟/渡辺勇大●1〔21−17、19−21、20−22〕②李俊慧/劉雨辰70分

※中国が10度目のトマス杯優勝

トマス杯:バドミントン世界一の国・地域を決める団体戦として最も権威ある大会。ト杯は1939年に国際バドミントン連盟(現世界バドミントン連盟)会長のジョージ・トーマス卿(全英OP21回優勝)が、大会の開催を進め、優勝トロフィーを寄贈。大会名にその名がつけられた。1941年に初開催を予定していたが、第2次世界大戦のために。延期。1948-49年に念願の第一回トマス杯が開催された。84年に男女同時に開催、86年から2年に一度の開催(それまでは3年に一度)となった。

試合形式:2ダブルス(複)、3シングルス(単)で、世界ランキングの高い順に試合が行なわれる。試合の種目順はオーダーによって変わる(種目順の例:第1単→第1複→第2単→第2複→第3単)。予選リーグは5試合すべてを行ない、決勝トーナメント・準々決勝以降は先に3試合を制した国・地域が勝利。単複兼ねて出場することができる。

取材・文/バドミントン・マガジン編集部

写真/菅原淳

投稿日:2018/05/28

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